大判例

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静岡地方裁判所 昭和56年(ヨ)138号

債権者

細沢勉

債権者

村松一男

債権者

内藤光男

債権者

杉本安美

債権者

望月隆一郎

債権者

小松友次

右債権者六名訴訟代理人弁護士

市川勝

福本庸一

債務者

豊年製油株式会社

右代表者代表取締役

師崎正夫

右訴訟代理人弁護士

田平宏

原慎一

松本正一

森口悦克

債務者補助参加人

豊年製油労働組合

右代表者中央執行委員長

秋山正義

右訴訟代理人弁護士

安西愈

大室征男

主文

一  債権者らが債務者に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  債務者は、昭和五六年五月二〇日から本案判決確定に至るまで、毎月二五日限り、債権者細沢勉に対し月額金二五万一一四一円、同村松一男に対し月額金一八万四六一五円、同内藤光男に対し月額金二二万〇六〇一円、同杉本安美に対し月額金一九万九七四五円、同望月隆一郎に対し月額金二二万三二七九円、同小松友次に対し月額金一六万三四〇五円をそれぞれ仮に支払え。

三  債権者細沢、同村松、同内藤、同杉本及び同望月のその余の申請を却下する。

四  訴訟費用のうち、参加によって生じた費用は補助参加人の負担とし、その余は債務者の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  申請の趣旨

1  主文第一項と同旨

2  債務者は、各債権者に対し、昭和五六年五月二〇日から本案判決確定に至るまで、毎月二五日限り、別紙債権目録(略)記載の金員を仮に支払え。

3  申請費用は債務者の負担とする。

二  申請の趣旨に対する答弁

1  債権者らの申請をいずれも却下する。

2  申請費用は債権者らの負担とする。

第二当事者の主張

一  申請の理由

1  債権者らはいずれも債務者に雇用され、同社清水工場に勤務していた従業員であり、債務者は油脂、油粕及び副産物の製造、加工、販売等を目的とする株式会社であって、肩書地(略)に本店を置き、清水市等に工場を有するものである。

2  債務者は昭和五六年五月一九日以降債権者らとの雇用関係を否定し、その就労を拒否している。

3  債権者らは毎月二五日に債務者から賃金の支払いを受けていたところ、昭和五六年二月から四月までの平均賃金(月額)は別紙債権目録記載のとおりである。

4  債権者らは、いずれも債務者より支払われる賃金により生計を維持していたものであり、本案判決の確定を待っていたのでは回復し難い損害を蒙ることになる。

よって、債権者らは債務者に対し、申請の趣旨のとおりの裁判を求める。

二  申請の理由に対する認否

1  申請の理由1ないし3の事実は認める。

2  同4の事実は争う。

三  抗弁

1  ユニオン・ショップ協定の存在

債務者は補助参加人(以下「参加人組合」という。)との間で昭和二八年一二月六日労働協約を締結し、以来右労働協約は更新されているところ、同第三条には、組合員の範囲として、「会社の従業員は原則として組合員となるものとする。」と規定され、同第四条には、脱退・被除名者の取扱いとして「組合を脱退し、または除名された者は会社は原則として解雇する。」と規定されている(以下、右各条項を「本件ユニオン・ショップ協定」という。)。

2  債権者らの参加人組合からの脱退

債権者らは昭和五六年二月二六日参加人組合に対し、書面をもって脱退の意思表示をした。

3  本件解雇

参加人組合は昭和五六年四月三〇日債務者に対し、本件ユニオン・ショップ協定に基づき債権者らを解雇するよう請求した。そこで、債務者は右請求が組合員の総意に基づく強い要請であり、その団結意思を無視することはできない等の判断から、債権者らの解雇もやむを得ないとの結論に達し、同年五月一九日同人らに対し、本件ユニオン・ショップ協定に基づき、労働協約第五六条第四号及び就業規則第五三条第四号により解雇する旨の意思表示(以下「本件解雇」という。)をした。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1、2の事実は認める。

2  同3の事実のうち、参加人組合が昭和五六年四月三〇日債務者に対し、本件ユニオン・ショップ協定に基づき債権者らを解雇するよう請求したこと、債務者が同年五月一九日本件ユニオン・ショップ協定に基づき債権者らに対し、本件解雇の意思表示をしたことは認め、その余は不知。

五  再抗弁

債権者らは参加人組合を脱退したその日のうちに、申請外合化労連豊年製油労働組合(以下「合化労連豊年労組」という。)に加入したのであるから、債権者らには本件ユニオン・ショップ協定の効力は及ばない。

六  再抗弁に対する認否及び参加人組合の反論

再抗弁は争う。債権者らは合化労連豊年労組に加入したと主張しているが、右組合は成立していない。すなわち、合化労連豊年労組が昭和五三年一〇月八日に結成されたか否かについては、現在当裁判所昭和五六年(モ)第三一五号、同三二二号事件として係争中であるが、事実は脱退、新組合の結成ではなく、北村らは当時参加人組合の合化労連脱退決議に関し、その手続を無効とし、自分たちが合化労連豊年労組を継承したとの考えのもとに分派活動していたにすぎない。このことは、債務者清水工場の望月総務部長に対し、北村らが「脱退したものではない。引き継いだのだ」と明白に脱退・新組合結成の事実を否定していること、昭和五三年一〇月八日に結成大会を開催し同月一五日には作成を終了したとする大会議事録の記載内容に、右作成後である一一月二五日以降でなければ記載し得ない事項が記載されていることなどから明らかである。にもかかわらず、北村らが脱退・新組合の結成と主張したのは、北村らが同人らの解雇に係る訴訟事件を有利に導くため机上で作り上げたものにすぎないのであって、労働組合としての実態を有するものではない。したがって、債権者らが加入したと称する合化労連豊年労組はその結成事実、手続その他からみて労働組合ではなく、債権者らの別組合に加入したから本件ユニオン・ショップ協定の効力が及ばないとの主張は、その前提事実をそもそも欠いている。

七  参加人組合の主張

本件解雇の正当性について

1  債権者らの参加人組合からの脱退に対して本件ユニオン・ショップ協定の適用がある。すなわち、労働者が団結するのは、これを基盤として団体交渉等による労働条件を維持・改善するなどの経済的地位の向上を図り、究極において人たるに値する生活を確保し、その主体性を保持することを目的とし、その目的を達成するために、組合員に対して統制を及ぼし(組織強制)、組織の拡大を図り(団結への強制)、もって労働市場の独占を期して使用者と対等な関係を維持発展させることにある。そして、この組織強制に法的効力が付与されるのは、組織労働者(とくに多数者たる組織労働者)の団結権を未組織労働者の団結権、すなわち、仮に新たに労働組合を結成する権利としての団結権に優越させることであり、これはより多数の労働者の権益を擁護・助成するため、これに抵触する一部少数者の脱退の自由等が制限され、団結を強制されてもやむを得ないとする団結権の本質に由来するのである。したがって、本件ユニオン・ショップ協定の効力は当然に脱退した債権者らにも及ぶものというべきである。

2  参加人組合は組合規則上脱退を認めていない。これはユニオン・ショップ協定に基づく企業内労働力を独占し、強固な団結を維持し、会社に働く労働者の労働条件の改善向上を強力に実現する団結権にかんがみ、これを弱体化し、団結権の侵害となる行為を許さないという労働組合の組織統制の機能上当然の帰結である。そして、本件ユニオン・ショップ協定において、解雇事由として脱退を掲げているのは、万一本件のごとく組合の統制に従わず事実上脱退行為に出て組合を離脱しようとする者が生じたときは、これを解雇することによって、企業内の労働力の独占機能を確保し、団結権を維持してゆく必要があるからである。債権者らはこのようなユニオン・ショップ協定の存在を知り、その機能と団結統制権限を承認して組合の一員として行動してきたにもかかわらず、多数決原理が機能しなくなったような特別な事情が存在するということがないのに脱退をしたのであるから、右脱退は、仮にその目的が別組合に加入するという場合であっても許されず、したがって本件解雇には相当性があるから有効である。

3  債権者らの脱退行為は、組織団結を弱め、ユニオン・ショップ協定による強力な団結を破壊する積極的な反組織行動であり、まさに除名にも値する行為である。また、債権者らは、同人らが加入した合化労連豊年労組の存否について現在当裁判所などにおいて係争中であることを承知し、また、北村ら六名が除名・解雇された昭和五三年当時の経過、事情について充分熟知しているにもかかわらず、突然一方的に脱退届の提示という反組合的な行動をしたものであり、参加人組合としては、組合の指導、説得を聞き入れず一方的に係争中の北村らに加担して分派活動を継続することを放置しておくことは団結統制上許しがたく、このような事情に基づく本件解雇には正当性が認められる。

4  ユニオン・ショップ協定が締結されている場合には、組合の団結権は当然労働者の個人的利益に優先し、組合員が脱退するには、一定の制約を受けることになり、組合員個人の脱退の自由と既存の団結組織との調和が図られなければならない。そして、この調整にあたっては、脱退せんとする組合員のとった態度を考慮し、脱退が組合の団結統制権を侵害する態様で行われた場合には、組合員の権利保護よりも組合の団結権が優先すると考えるべきである。

そして、脱退の態様の判断にあたって考慮されるのは、脱退せんとする組合員が組合員としての当然の義務を尽したか否かという点と脱退にあたり組合に対しその理由を明示し、その理由に基づき組合として団結組織を保持する上で必要な措置をとり得る態様のものであったか否かという点であるが、債権者らの脱退はこのいずれの点も全く履行されておらず、参加人組合の団結権を否定する態様でなされたものであって、このような脱退の場合には参加人組合の団結権が優先する。

八  参加人組合の主張に対する債権者らの反論

1  参加人組合は、合化労連豊年労組ないし債権者らの団結権より参加人組合のそれが優越する旨主張するが、団結権相互間に優劣はなく、平等であるから、右主張は失当である。

2  また参加人組合は、債権者らの脱退について、正当性がなく、参加人組合の団結権を侵害する旨主張するが、債権者らは、団結権の保護に値する実態を備えた合化労連豊年労組に加入し、主体的な労働運動を展開する目的で参加人組合から脱退したものであって、もとより正当な脱退であり且つ参加人組合の団結権を侵害する行為でもない。

3  更に、参加人組合は、債権者らが参加人組合から脱退するには、団結権の趣旨から制約を受ける旨主張するが、憲法や労働組合法はもとより、参加人組合の規約においてもそのような制約は認められていない。かえって、憲法二八条は、債権者らが参加人組合から脱退する自由という消極的団結権を保障しているのである。そして、参加人組合においても債権者らの脱退が有効であることを前提に債務者に対し本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇請求に及んでいるのであるから、債権者らの脱退の効力について問題のないことは明らかである。

第三疎明関係(略)

理由

一  申請の理由1及び2の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで本件解雇の効力について検討する。

1  抗弁1及び2の事実、同3の事実のうち、参加人組合が昭和五六年四月三〇日債務者に対し、本件ユニオン・ショップ協定に基づき債権者らを解雇するよう請求し、債務者が同年五月一九日本件ユニオン・ショップ協定に基づき債権者らに対し、本件解雇の意思表示をしたことはいずれも当事者間に争いがない。

2  債権者らは再抗弁として、参加人組合から脱退した日に合化労連豊年労組に加入したから、債権者らには本件ユニオン・ショップ協定の効力は及ばない旨主張するので判断する。

(一)  (証拠略)によれば次の事実が一応認められ、これを左右するに足りる疎明資料はない。

(1) 参加人組合は債務者の従業員で組織する労働組合であるが、昭和三八年に合成化学産業労働組合連合(以下「合化労連」という。)に加盟して「合化労連豊年製油労働組合」(以下「旧合化労連豊年労組」ともいう。)と称していたが、昭和五三年九月一六、一七両日開催された第二三回定期中央大会において、合化労連に対する組合財政上の負担軽減等を主な理由として合化労連からの脱退が決議され、続く全組合員による投票の結果、右脱退が正式に決定された。そこで参加人組合は、組合の名称を「豊年製油労働組合」と変更し、同月二五日合化労連に対し脱退届を提出するとともに同月二七日債務者に対し右脱退と名称変更を通知した。

(2) 参加人組合の組合員である申請外北村修治、同漆畑益己、同金沢(ママ)二、同秋山志圭明、同木下潔及び同戸野弘の六名(以下「北村ら六名」という。)は、参加人組合が合化労連から脱退することは産業別労働組合に結集して労働条件の維持向上のために闘うという姿勢を否定し、御用組合化を進めるものであるとしてこれに反対していたが、前記のとおり定期中央大会及びそれに続く全員投票において脱退が可決され、合化労連に対して脱退届が出されたため、自らが旧合化労連豊年労組を継承し、その運動を引き継ぐほかはないと考え、そのために参加人組合とは別の新組合を作る必要があるとして、同年一〇月二日再建準備委員会を開いて新組合の運動方針や組合規約、予算等の原案を検討した。そして、同月八日午前九時三〇分から静岡県評会館会議室において、「第二四回合化労連豊年製油労組再建大会」の名称で実質上の結成大会を開催し、昭和五三年度の運動方針や組合規約の大綱を決定し、昭和五三年度の役員として中央執行委員長に北村、副委員長に戸野、中央書記長に漆畑、会計監査に金沢を各選出し、また組合の仮事務所を清水支部は全金缶詰包装支部内に、神戸支部は合化積水労組内にそれぞれ設けることを決定したうえ、同日右大会終了後合化労連に対し要請書と題する書面で加盟申請手続をした。

(3) 北村ら六名は、同月一一日参加人組合執行部に対し訣別申入れ書を提出したが、その趣旨内容は、参加人組合中央執行委員長秋山正義らがなした合化労連からの脱退は、組合としての運動姿勢だけでなく、手続上も承認できないので、北村ら六名は右秋山らと訣別し、旧合化労連豊年労組の組織を引き継ぎ、労働者のための労働運動を進めていくことを決定したので、訣別を申入れる、右秋山らが反省して合化労連豊年労組に復帰するならば、それを受け入れる、というものであった。また、同日、北村ら六名は、債務者に対し、合化労連豊年労組の存続及び同組合の昭和五三年度の役員を通知するとともに、「要求書」と題する書面で、北村ら六名が継承した合化労連豊年労組を正当な組合として認め、参加人組合と同等に取り扱うこと、組合事務所、組合掲示板等の設置、貸与、組合費のチェック・オフの実施を要求し、別の書面で団体交渉の申入れをした。

(4) 北村ら六名は、同月一二日組合員に対し、同人らが旧合化労連豊年労組を引き継いだ旨を記載したビラを配布し、そのころから合化労連豊年労組として各支部ごとに機関紙(清水支部は「二五四ニュース」、神戸支部は「こぶし」)を発行して、自らの活動状況等を報告し、また同月一四日には合化労連の東海地協会議に書記長の漆畑が合化労連豊年労組として出席した。

(5) 北村ら六名は、前記のとおり合化労連に対し加盟申請をしたが、合化労連は同月二四日中央執行委員会を開催し、審議した結果、北村ら六名がなした旧合化労連豊年労組を継承する旨の申入れを承認し、右労組は従来どおり存続するものと確認するとともに、参加人組合のなした右脱退は旧合化労連豊年労組の組合員がグループとして脱退したものと受け取るということになった。

(6) 北村ら六名はその後六回にわたり債務者に対し団体交渉の申入れをなしたが、債務者が団体交渉を拒否する態度をとったため、昭和五四年五月二一日、静岡地方労働委員会に債務者が債権者らとの団体交渉に応諾すべきことを求めて不当労働行為の救済命令を申立て、昭和五五年九月八日、右申立てを認容する命令が出された。また、北村ら六名は、昭和五三年一二月二一日、右労働委員会に対し、労働組合としての資格審査を申立て、これに対し昭和五四年二月二一日合化労連豊年労組を労働組合法に適合する組合と認める決定(資格審査証明)が出され、同年三月七日労働組合としての登記がなされた。

(7) そして、債権者らは、参加人組合を脱退した昭和五六年二月二六日北村ら六名が結成した合化労連豊年労組に対し組合加入を申込み、右組合は同日これを承認した。

以上のとおりである。

(二)  もっとも、参加人組合は、北村らの「脱退したものではない。引き継いだ。」旨の言動や大会議事録の記載内容の矛盾点をあげて北村ら六名の脱退・新組合結成の事実を争い、同人らの行動は同一組織内の分派活動であって、脱退・新組合の結成ではない旨主張する。

なるほど(証拠略)によれば、北村らが昭和五三年一〇月一六日債務者清水工場の総務部長である望月清司と話し合った際、望月から参加人組合を脱退して新組合を結成したのかと質問されたのに対し、「脱退したのではなく、合化労連豊年労組を引き継いだ」旨返答したことが一応認められるけれども、北村らの右言動は、同人らが合化労連豊年労組を継承する正統な組合であるとして団体交渉の申入れに臨んだ際の応答であって、その言葉尻を捉えて真意のほどを追及するのは必ずしも当を得たものとはいえないし、それまでの北村らの前認定の活動状況を考慮すれば、右応答をもって、北村らが新組合を結成し、参加人組合を脱退した事実を否定することはできないというべきである。

また、大会議事録の記載内容については、たしかに、議事録上の予算(案)明細のうち北村らの基準月収額を後日補足して大会前後の九月ないし一一月分とするなど必ずしも大会当日の議事内容を正確に記載したものではないことが窺われるし、その他議事録の作成日付や大会会場である会議室の借用時間等についても疑問の余地がないとはいえないけれども、前認定のとおり、再建大会において少なくとも、組合規約の大綱や運動方針の決定及び役員の選出等がなされたことが認められるから、右の点から北村らの新組合の結成を否定することもできないというべきである。

(三)  ところで、憲法二八条は、労働組合の団結権にとどまらず労働者の労働組合選択の自由をも保障し、労働組合に対してはその組合員の多寡にかかわらず平等に団結権を保障しているものと解されるから、労働組合が使用者との間でユニオン・ショップ協定を締結している場合において、右労働組合の組合員が組合から脱退若しくは除名され、その後直ちに憲法二八条で保障された団結権の保護に値する自主的な労働組合を結成し又はそれに加入したときは、特段の事情のない限り、ユニオン・ショップ協定の効力は右脱退者若しくは被除名者に対しては及ばないものと解するのが相当である。

そこで、これを本件についてみるに、前認定のとおり債権者らは参加人組合から脱退した日に北村らが結成した合化労連豊年労組に加入したが、右組合は、北村ら六名が労働条件の維持改善等主体的な労働運動の展開のために結成したものであって、昭和五三年一〇月八日の結成大会における組合規約の大綱や役員の決定、その後の債務者への再三に亘る団体交渉の申入れ、各支部ごとの機関紙の発行等組合結成に至る経緯、結成後の組合の実態及び活動等の事実に照らせば、少数の組合員で組織されているとはいえ債権者らが加入した当時すでに独自の規約と組織を有する自主的な組合としての実態を備えており、憲法二八条で保障された団結権の保護に値する労働組合と認められるから、本件ユニオン・ショップ協定の効力は債権者らに対し及ばないというべきである。

(四)  参加人組合は、債権者らの参加人組合からの脱退について、多数決原理が機能しなくなるなどの事情が存在していないのに脱退したもので正当性がなく、また脱退の理由を明示しないなど参加人組合の団結権を無視し侵害する態様・方法でなされたものであるから参加人組合の団結権が優先する等の理由により本件解雇は正当であると主張する。

しかしながら、憲法二八条で認める団結権の保障の精神に鑑みれば、本件のように労働組合と使用者との間でユニオン・ショップ協定が締結されている場合であっても、脱退が組合の団結権を妨害する意図のもとになされたり、使用者に利益を与えるような目的ないし態様でなされた場合は格別、そうでない限り脱退は原則として組合員の自由であり、またその態様・方法についても脱退者において任意の方法で脱退の意思表示をなせば十分であって、脱退の動機、理由等を明示するまでの必要はないというべきである。そして、債権者らにおいて参加人組合の団結権を侵害する目的ないし態様で脱退したことを認めるに足りる疎明資料はないから、参加人組合の右主張は失当というべきである。

(五)  そうすると、債権者らの脱退を理由に本件ユニオン・ショップ協定に基づいてなされた本件解雇は、いずれも解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。

三  以上のとおり、債権者らに対する本件解雇はいずれも無効であり、債権者らと債務者との雇用契約は依然として継続していることになるから、債権者らは債務者の従業員として労働契約上の権利を有するところ、本件解雇がなされた昭和五六年五月一九日以降債務者は債権者らとの雇用関係を否定し、その就労を拒否していること、債権者らは毎月二五日に債務者から賃金の支払いを受けていたが、債権者らの本件解雇前の昭和五六年二月から四月までの平均賃金(月額)が別紙債権目録記載のとおりであることはいずれも当事者間に争いがない。

ところで、(証拠略)(給与明細表)によれば、右賃金の中に債権者細沢は月額八六九三円、同村松及び杉本は月額三〇〇円、同内藤は月額四九一三円、同望月は月額五二九一円の通勤費が含まれていることが一応認められるところ、通勤費は現実に出社した者に対して支払われるべきものであるから、本件仮払いを認めるべき賃金からこれを控除するのが相当である。

そうすると、債権者らに支給されるべき賃金の額は、債権者細沢が金二五万一一四一円、同村松が金一八万四六一五円、同内藤が金二三万〇六〇一円、同杉本が金一九万九七四五円、同望月が金二二万三二七九円、同小松が金一六万三四〇五円である。

四  次に保全の必要性についてみるに、(証拠略)によれば、申請の理由4の事実が一応認められるから、保全の必要性があるというべきであり、また右賃金額はいずれも債権者らの生活を保持するうえで必要な額というべきである。

五  以上の次第で、本件仮処分申請のうち、労働契約上の権利を有する地位の保全を求める申請はいずれも理由があるが、賃金の仮払いを求める申請については、主文第二項掲記の金額の限度で理由があるので、本件仮処分申請は右理由のある限度において保証を立てさせないでこれを認容し、その余の部分は理由がないから却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九四条、九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高瀬秀雄 裁判官 荒井勉 裁判官 山崎勉)

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